kyoko ibe
   
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伊部京子は和紙が伝統工芸と芸術のためだけの素材とみなされていた1970年代に、和紙を素材とした創作活動を開始しました。1967年に京都工芸繊維大学の大学院修士課程を修了し、それ以来一貫して和紙の領域で制作をつづけ、これまでに二十数か国に招待されて、展覧会を開催し、ワークショップ、レクチャー、講座を開設して教鞭をとり、国際展の審査員を務めるなど、様々な活動を展開しました。その斬新な和紙への取り組みは、伝統を尊重すると同時に、技術的な実験を取り入れて紙の限界を押し広げ、工芸を芸術へと昇華させました。アート、クラフト、デザインの境界を越えた独自の創作活動で、和紙造形のパイオニアとして世界で高く評価されています。海外の数多くの舞台芸術グループとの共同制作に参画し、1987年タンディービール カンパニーのための舞台装置で、イサドラ ダンカン ビジュアルデザイン賞を授与されました。2023年 プリンストン大学の招聘で、ルービス アートセンター のハーレイ ギャラリーで個展を開催し、ドウェイン ベッツの”Felon;American Washitales”の舞台装置を制作、マッカーター シアターで上演されました。”2024年京都中信美術館で、個展開催。国内外の受賞多数。日本とアメリカでの著作出版多数。2009年文化庁文化交流使を拝命し、エジプト、アメリカでプロジェクトを実施しました。永年京都工芸繊維大学で講座を担当し、特任教授を務めました。

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和紙について(伝統的な手すき紙)

京子の制作工程はビデオをご覧ください。

カルチャークエストについて語る京子

中国で紀元前2~3世紀に発明された紙の製法が日本に伝播したのは7世紀以前であると伝えられています。それ以来、若木の靭皮繊維を原材料とする独自の製法へと発展し、和紙の原型へと独自の進化を遂げました。それは山紫水明の地理的条件と、人々の勤勉さと精神的な要因によるところなのです。
紙は書写材としてだけでなく、日常生活では住環境の構成材として、また衣類としても重要な役割を担ってきました。儀式や宗教、祭りなどにも歴史的に使われ続けてきました。古人たちは紙は神に通じると信じていたようで、この2つは同じ発音なのです。
21世紀になり、日常使われる紙のほぼすべてが機械漉きのものにとってかわられましが、日本ではまだ数百軒の家が伝統的な紙漉きに従事しています。この人々は貴重な存在であり、単に日本の文化継承者としてではなく、世界の人間国宝だとみなされます。
一枚の白い手漉き紙は静謐で、ぬくもりのある平和な情感は機械漉きの紙には求められるところではありません。茶道の貢献者である千利休は16世紀に、日本の美学を和、敬、清、寂の4文字で表現しました。和紙は千利休の精神を最も雄弁に表しいていると思われます。和紙は私たちの依存する、尊いけれど壊れやすい自然界の美と心豊かに共棲する未来へと導く、エコ エスティックな精神を見事に具現しているのです。

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